Twitterスペースの録音をCloud Speech-to-Textを使って文字起こしするまで

ちょっと頑張ったので、自分&周囲が使えるノウハウ共有メモ。Twitterスペースの録音は公開データで機密情報ではないため、ゆるく全部オンラインのサービスを使っていく。


  • Twitterスペースの録音をダウンロードする
  • 録音ファイルをGoogleのCloud Speech-to-Textに放り込めるように加工する
  • GoogleのCloud Speech-to-Textを使って変換する

Twitterスペースの録音をダウンロードする

録音スペース - Twitterスペース - プロダクト | Twitter Create

現在、端末にスペースの録音を音声ファイルとして直接ダウンロードすることはできません。ただし、ホストは録音を削除していない限り、スペースの録音のコピーをTwitterのデータアーカイブから.tsファイルでいつでも取得できます。このファイルは.mp3や.wavなどの音声ファイルだけでなく、動画ファイルにも簡単に変換できます。

とのことなので、毎回データアーカイブのダウンロードリクエストをして、該当の.tsファイルを探す。ファイル名だけだと何時のものか分かりづらいので、データアーカイブの該当スペースを参照する。

ここのt.co〜のリンクを開くと、ファイル名が参照できる。

録音ファイルを加工する

.ts ファイルを .wav形式にする

GoogleのCloud Speech-to-Textは.ts形式ではNGなので、WAV形式にする

Convertio — ファイルコンバーター


WAV形式にしつつ、チャンネル数は1、周波数は44100、時間も録音開始からに切り取る。

ここでファイル名を変更する

次のステップでファイル分割をすると、元のファイル名に連番のサフィックス付く命名規則になるので、ここでファイル名を変更しておく。

space_yyyymmdd.wav など。

録音のWAVファイルを分割する

Cloud Speech-to-Textの60秒制約と、python実行環境とするGoogle Colabのメモリ制限に引っかからないように、録音WAVファイルを55秒ごとに分割する。

オーディオファイルオンラインアプリの分割-無料のオンラインWAVファイルスプリッター

分割後のwavファイルたち


これで録音した音声ファイルの加工は終了。

GoogleのCloud Speech-to-Textを使って音声ファイルをテキストに変換する

Google DriveGoogle ColabからCloud Speech-to-Textを使って変換する手順は下記のサイトを参照。

laid-back-scientist.com

【音声認識】GCPのCloud Speech-to-Text APIを利用して音声認識入門してみた - Qiita


最後、変換を実施するところだけ分割したWAVファイルを1個1個やってたらだるいので、ループ処理を追加する

import io

from google.cloud import speech

for i in range(1, 31, 1):
    voice_file_path = 'yyyymmdd/space_'+str(i)+'.wav'

    with io.open(voice_file_path, 'rb') as f:
        content = f.read()

    audio = speech.RecognitionAudio(content=content)
    config = speech.RecognitionConfig(
        encoding=speech.RecognitionConfig.AudioEncoding.LINEAR16,
        sample_rate_hertz=44100,
        language_code='ja-JP')
    client = speech.SpeechClient()
    
    response = client.recognize(config=config, audio=audio)
    for result in response.results:
        print(result.alternatives[0].transcript)

Speech to Text完了! 機械が聞き取れるくらいの喋り方を心掛けましょう(おまいう)

Re: Re: ウマ娘記事への反論ありがとうございました

junchangchang.hatenablog.com

「恋はダービー☆」について、楽曲の解説ありがとうございます。
同じ競馬好きな方ならわかると思うのですが、逃げる、追い込むという戦法は馬にとっては強烈な個性であり、それをサイレンススズカツインターボのような逃げ馬以外に「貼り付ける」ことについてはセンスを感じないですし、だから理解されなかったんじゃないですか、という主旨です。元記事でもわざわざ何度も『トウカイテイオーに「逃げれない」とか歌わせてたプロジェクト』『トウカイテイオーに「逃げれない」と歌わせるような当時の方針』と書いている通り、その致命的な一語を選んでしまうのはセンスがなかったと思います、それも試聴でファーストインプレッションとなる序盤に。競馬をある程度知っていて「逃げる」というフレーズは大きく、特に馬の個性について強い意味を持つことがわかっているのであれば、トウカイテイオーという「逃げ」をほぼ連想できない馬に歌わせる歌詞として「逃げれない」は不適切であり、それを選んでしまった作詞家、通してしまった責任者に対する印象は、何度歌詞について解説いただいても「センスないな」「本当に競馬を、馬を理解してた?」で変わることはありません。
試聴などからラブソングと理解できるかどうかを争っているのではありません。どういうテーマ・主旨の曲であろうと、トウカイテイオーに「逃げれない」と歌わせるのは、心の底からセンスがない・競馬をわかっていないと私が思ったので「そういうセンスも理解されない一因だったのでは?」と論旨に加えただけで、Junchangchangさんが「いや、ラブソングだしこれこれこういう良いところがある」と好きな曲を解説いただくのは、良いことだと思います。


アプリがリリースされてなかったんだから売れなくて当たり前、売れなかった楽曲も、ラジオ配信も、すべてがプロモーションであったのでサイゲは痛くも痒くもないというのはその通りで、反響が微妙でも地道に続けて種を撒き続けてきたのは無駄ではなかったのは確かだと思います。ジャンルとして、それがなければ成立しないくらいのつもりでやっていたはずですが、結果的には「それだけでは足りないもう1本の軸」が必要で、それが前回の記事で挙げていただいた功労者の方々によってまずもたらされた、それは揺るがないと思います。単なるスポーツガチのゲーム(アニメ)じゃ売れない、2本の軸が融合してるから今日の評価があるのは論をまちません。その前段階、種まきの段階でアプリがリリースできない状況で特典もつけられず、そういった中でも当時のサイゲ社として「それでもこれくらいの売上・反響はあるだろう」という達成予測があり、それすらも未達だった(それほどコケた)という見立ては、そんなに的外れではないはずです。達成予測が実際の売上よりもっと上にあった、種まきの段階でも大きな反響を得ようとしていたというのは、元記事で散々名前を出した石原章弘氏がコンテンツプロデューサーとして前に出てプロモーションに参加していた、というのが根拠です。「当初はあの石原氏が仕掛けてるのにあれだけしか売れなかった、大コケだ」という内容ですからね。

じゃあなぜ石原氏が退任したんだ、という話になるかもしれませんが、そんなことは知りません。外から分かるわけないじゃないですか。外から分かりもしないことを起点にあれこれ邪推を重ねるからギャンブルジャーナルかよ! ってエントリになるんじゃないんですか?

ギャンブルジャーナル読まれたことありますか?(私は読んでいませんが) ギャンブルジャーナルであればもっと「石原氏がウマ娘プロジェクト遅滞の責任を取り退任する形になったのは、業界に詳しい人であれば誰でも知っている」くらいのことは書きますよ(知りませんが)。もちろん石原氏が退任した理由など我々一般人の知るところではありませんが、どういう理由があるにしろ遅滞しているプロジェクトの責任者を道半ばで退任し、すぐに同じような業界のサイゲ社に比べるとやや小規模な会社で働いているという事実を「大きな功績を残せなかったのではないか」と私が評することに何の問題があるのか理解しかねます。「クビにされた」「責任をとった」と言い切っているならまだしも。そのことについて「ギャンブルジャーナルみたいだ」と仰っしゃりたいのであれば、それも評する人の自由です。事実はそうではなく、私(石原氏)はプロジェクト内でこれだけ成功に貢献したんだ、ということであれば、今後アイマス同様に石原氏からウマ娘プロジェクト時代について語られることでしょう。

繰り返しますが馬名が出ていない以上、デザインだけをもって居たはずのディープやオルフェやブエナがいないと騒ぐのはお門違いじゃないですか?

まず正確な時系列と「騒がれた」時期の話になりますが、ブエナビスタだと思われていたキャラがデザインごと出てこなくなった、とされたのは最初のキャラクター名発表のタイミングです。

【写真追加】『ウマ娘 プリティーダービー』キャラクター&キャスト情報が公開! 11月30日より6ヵ月連続のCDリリースも決定 - ファミ通.com

この時点で「いたはずのブエナビスタ(と予想されていたキャラ)がいない」と、それなりの数の人が指摘しているのは事実です(個別には紹介しませんが、Twitterを上手く検索すると出てきます)。このタイミングではまだノーザンファーム生産の馬は確定していません。古くはマルゼンスキーから、同じ三冠馬シンボリルドルフナリタブライアンがいて(ミスターシービーは不在)、下の世代のゴールドシップまで出ているのにディープインパクトオルフェーヴルがいない、(特にオルフェーヴルゴールドシップに負けず劣らずの個性派として知られる)という状況で「ノーザンNGなのでは」という憶測があったことは確かです。また「後にサトノダイヤモンドが出ているため、厳密にはそうではなかった」と元記事でも補足してあります。

アドマイヤベガ(や、他にはアグネスタキオン)が出てるわけで社台系産=即NGじゃないことはサトノダイヤモンドより前に明らかです。

とのご指摘ですが、アドマイヤベガアグネスタキオン(※社台ファーム生産)は上記8月21日では名前が出てきていないため、この時点での「ノーザンNG説」に信憑性がないとは言い切れません。

それと、細かいですが

居たはずのディープやオルフェやブエナがいないと騒ぐのはお門違い

とのことですが、私は「ディープやオルフェが居たはず」とは書いておらず、あくまで「居たはずなのにいない」についてはブエナビスタ1頭について触れています。ディープインパクトオルフェーヴルについては「過去の名馬が勢揃いしている中で不自然なほど出てこない」という記載です。


「ギャンブルジャーナル」という言葉をいただいていたのでここでお返しさせていただくと、Junchangchangさんが前回書いた

状況的に見て直系のクラブ馬が出てきてなくてアドマイヤベガサトノダイヤモンドが出てる以上、社台からはNGが出て、権利半持ちの馬はオーナー側からOKが出た、ついでに言えば金子氏には断られたと見ていればおおよそ間違いないだろう。

も「ギャンブルジャーナルかよ!」ではないのでしょうか。しかも「おおよそ間違いないだろう」は断定するかのような書き方ですね。

法的には必要のないことをして、それで許諾を得られなかったから素直に引っ込めてるところに私は誠意を感じますけどね。

繰り返し書きますが、引っ込めた後については「むしろサイゲが手順を踏んでるから起きてること」のみ観測できるため、それはサイゲ社の誠意の現れなのでしょう。私が論っているのはその「引っ込めた」ことが「『ウマ娘』を展開する上で馬主に許諾を得る必要なんてない」中でなぜ起きたのかということであり、デザインまで完成してキャストにもオファーを行い決めたキャラクターを引っ込める合理的な理由が「発表する予定の当該馬関係者から何らかの待ったがかかった」以外に思いつくのであれば、それを主張すれば良いのです。「デザインまで完成してキャストも決まっていたキャラクターが引っ込められた、その理由についてはこれまで説明がない」までは事実です。その事実に対して「馬の関係者との揉め事など、キナ臭い裏事情があるのではないか?」と評するのは私の自由です。もちろん、本件について事実無根だからサイゲ社に消せと言われたり、損害賠償請求を起こされる可能性はゼロではありません。

殊更焚きつけるのはいかがなものか

とのことですが「お前のやっていることが気に入らない」がJunchangchangさんの言いたいことでしたか?

これは結果論ですけど、響かなかったですよね。

「売れなかった」を重要視しているのはアニメ1期放映前ですので、その後は『所謂「黒歴史」化してしまった(するしかなかった)曰く付きのコンテンツ扱い』という評価があってもなくても、売上・反響とはほぼ無関係でしょうね。ゲームもアニメも、過去のあれこれが無視されるくらい人を惹き付ける良い作品であるのは御主張いただいている通りだと思います。私は別に「黒歴史ゲーム閑古鳥」「キナ臭いアニメが大爆死」と言いたいわけではありませんので。


長くなりましたが、お読みいただけたのであればありがとうございました。

ウマ娘記事への反論ありがとうございました

junchangchang.hatenablog.com

まずは拙文を読んでいただき、それへの指摘や補足をいただいたことへのお礼を。ありがとうございました。

ウマ娘の転換点となったのは『シングレ』ではなくアニメ1期」について

これに関しては、下記の通り訂正済です。

見出しを変更『決定的な転換点「シンデレラグレイ」の制作』→『転換点の通過がハッキリした「シンデレラグレイ」の制作』
本文にはTVアニメ1期の放映についての言及で「このTVアニメの放映あたりを境に、ウマ娘プロジェクトの方針転換がある」と記載してあるため、書き方が悪かったシンデレラグレイの開始についての見出しを変更。内容としては引き続き「TVアニメ1期から方針転換が見える」

「ウマ娘」リリースまでの軟着陸っぷりを時系列で - あめ姫は友達が少ない

補足内容について

「2016年のプロジェクト発表と同時に披露されたプロモーションムービー」から「2017年12月のアニメPV第2弾」への変遷を、内容・表現について細かく噛み砕いていただいていて、私がいかに初期のPVが現路線と異なるかを上手く論建てして説明できずに端折ってしまっていた部分を鋭く説明していただいています。
タイトルの「立て直しの功労者」の人物についてもそうですね。現在の路線でしっかりとシステムの構築や表現を実現している人々がいるということです。

トウカイテイオーの楽曲『恋はダービー☆』に関する誤読はもっとひどい。あるいは悪意さえ感じるレベル」について

「ラブソングだっていうことは歌詞の全文読めばわかる」のはそれはそうで、冒頭だけ抜き出して批判するのは悪意がある、誤読だという論旨は、そうですね。しかし、未発売の楽曲についての評価はいつなされるかというと、それは試聴の段階で、歌詞の全文をわざわざチェックしにいってすべて理解した上かというと、そんなわけはないのですよ。別に大ヒットした曲の歌詞についてイチャモンをつけているわけではなく、逃げ馬として名を馳せたわけでもない馬の歌詞として「逃げれない」は理解されませんよ、ラブソングでもサイレンススズカツインターボが「逃げれない」と歌っていれば、もう少し解ってもらえたかもしれませんね。だから「売れなかったんじゃないですか?」という意味です。

「その他の要素について」について

そりゃ商売でやってるんだから売れた方がいいに決まってる。しかし売れる売れないに関わらず大事なことはあるはずだ。

「売れなかった」ことが路線転換のキーポイントであるという主旨なので、大事なことです。

ちなみにノーザンファームがどうたらとか書いてるけど、状況的に見て直系のクラブ馬が出てきてなくてアドマイヤベガサトノダイヤモンドが出てる以上、社台からはNGが出て、権利半持ちの馬はオーナー側からOKが出た、ついでに言えば金子氏には断られたと見ていればおおよそ間違いないだろう。

当初はノーザンがNG出してるという憶測が主流だったものの、「後にサトノダイヤモンドが出ているため、厳密にはそうではなかった」と記事内でも補足は入れてあります。個別に誰がNG出しているかについては重要ではありませんし。

むしろサイゲが手順を踏んでるから起きてること

ここについては、CV:水瀬いのりのキャラクターが消えて以降はその通りですね。ただし、キャラクターが何のアナウンスもなく消えたまま復活していない件については、それに至るまでの手順に間違いがあったことを示す事実であり、それが強い不信を生みミソをつけたというのも論旨の一部です。個人として「発表がないことも不満」ということではなく、また「名前が出ていない以上、何かを釈明する必要があるとは思えない」と所謂「黒歴史」化してしまった(するしかなかった)曰く付きのコンテンツ扱い、というのは売上に響いてもおかしくはないのではないでしょうか。

ここまで書かずに我慢してきたけど、元記事のブログ主、石原章弘氏が嫌いなだけじゃないの?

私が石原氏を嫌いだと、元記事の内容の信憑性に疑義がつくのでしょうか。


全体としては、私の至らない部分に関してしっかりと補足をいただいて非常にありがたかったので、感謝しています。

「ウマ娘」リリースまでの軟着陸っぷりを時系列で

今や押しも押されもせぬ超覇権ゲームとなったウマ娘

umamusume.jp

ウマ娘、さすがにここまでの超絶覇権ゲームとなるとは思っていませんでしたね。テレビアニメ1期目が佳作レベルのデキっぽくはあるらしく、そこそこ「史実」へのリスペクトがなされているコンテンツ……という評判は目にするも、このタイトルの「これまで」を考えるとやや微妙な気持ちにならないわけもなく……。「ゲームも面白いが、キャラが魅力的」「ちゃんと元ネタとなったキャラクターを描いている」「元ネタへのリスペクトを感じる細かい設定」今やこういった意見を見ない日がない、現実の競馬のスターホースを真面目に描き、リスペクトを欠かさず、魅力的に仕上がっている「ウマ娘」の世界。しかし、過去に起きている「ブエナビスタと思われるCV:水瀬いのりのキャラが断りもなく消えて、その説明も顛末も明らかになっていない」という「黒歴史」が存在し、タイトルの発表からゲームアプリのリリースまでは約5年がかかっている。「ウマ娘」のリリースまでに何があったのか、時系列で追ってみたい。

タイトルの発表(2016年3月26日)

まず、本作が公表されたのは2016年3月26日のAnime Japanにて。

app.famitsu.com

キャラクターの容姿と、キャストと、プロモーションビデオがAnimeJapanのCygames(以下、サイゲ)のステージで発表されている。

……そう、後知恵ではすぐに気がつく通り「キャラクターの名前」がこの時点では公表されていないのである。

ここで紹介した18頭はいずれも名馬揃い。獲得賞金総額は151億円にもなるとのことだが、具体的にどんな馬が登場するのかはまだ明かされていない。

キナ臭い、実にキナ臭い。獲得賞金総額が計算できるということは全キャラのモチーフとなる競走馬は確定しているはず。キャラクターデザインの制作に元ネタが不必要なわけがない。キャラデザが決まっていて、キャストも決まっていて、PVも作成して、競馬ファンへの最大の訴求となる馬の名前を出さない理由なんて思いつかない。つまり、明かせない理由がこの時点で既に存在していたのである。この舞台での発表と、競走馬の各種権利者への根回しが板挟みになっていた……みたいな状況は推察される。しかしこの日、本作は公表に踏み切られた。

youtu.be

当初のPVを見ても、走る動きよりもダンスの動きを魅力的に見せる印象となっていて、本筋は「競走」ではなく「ライブ」なのではないかとも思える。この頃は人数と動かし方が現実のアイドルに近いような。ゲーム版で話題となっている、スパートの時の表情の大きな変化が見える。

マチ★アソビ vol.16 ステージイベント(2016年5月4日)

www.famitsu.com

サイゲームスのコミックアプリ“サイコミ”にて『ハルウララがんばる』というマンガが展開されること以外は、まだプロジェクトの全貌は明らかになっていない

発表から1ヶ月以上たっても「何が行われるか?」が具体的ではなかったが、PVとサイゲがゲーム会社であることから、何となくゲームが制作されてアプリなどで提供されるのでは……?くらいの淡い理解がなされていた(ような気がする)。このイベントが本作リリースまでの軟着陸っぷりのキーポイントとなるのは、ここで「アイマス育ての親」とも評される石原章弘氏の目撃情報があり、キャストに何かを指示していていたというツイートがある、ということだ。
石原氏が長年携わってきた「アイマス」シリーズでは2015年9月に「デレステ」がリリースされ、石原氏はその4ヶ月後の2016年1月にバンナムを退職していた。その人が、本作ウマ娘のステージイベントに裏方として来ていて、関わっているのではないかと目されていた。
石原氏の動向については、この後に明らかになる。
ちなみに、この時点でもキャラクター名は明らかになっていない。

Cygames NEXT 2016(2016年8月21日)

「Cygames NEXT 2016」 新情報多数の『グラブル』から『ウマ娘』の熱狂ライブまで新展開続々発表 | インサイド

www.famitsu.com

石原氏は本作ウマ娘のコンテンツプロデューサーであることがここで判明する。

ここで、ついにメディア展開が発表に……!

また、ランティスから、2016年11月30日より6ヵ月連続でCDが発売されることも発表。予想を軸にしたCD連動型の企画や、イベントなども開催予定とのこと。

あれっ? ゲームは? Cygamesのコンテンツなのにゲームの情報がサッパリない。PVではキャラクターたちが競走していたのに……ゲームは? そう、公表から約半年、プロジェクトは既に暗礁に乗り上げていたのである。

そして、記事をよーく見た聡明なウマ娘ファンが気づくのである。

「あれっ、ブエナビスタと思われていた CV:水瀬いのり のキャラがいない……?」

また、竹達彩奈上坂すみれなど、当時既にアイドル的人気の高い声優も起用から外れている。この件は色々憶測を呼ぶことになり、今なお「馬主など権利者の影響が大きいので取り扱い注意」という本作を語る上での必須事項へとつながっていくのである。過去の名馬が勢揃いしている中で不自然なほど出てこない三冠馬ディープインパクトオルフェーヴルなどから「ノーザンファーム生産馬はNGなのでは」という憶測につながる(後にサトノダイヤモンドが出ているため、厳密にはそうではなかった)

この時点で何らかの表に出せないキナ臭い裏事情があることが見え見えで、まあどう考えても踏んではいけない虎の尾をどこかで踏んでいるよねって、そりゃぁ皆さん思いますよね。

ここで閑話休題、競走馬の権利について

ウマ娘関連でよく言われる「馬主が権利を持っているが、ウマ娘に馬名の使用許可を出していない」についての話をしておこう。

mikanlaw.jp

最高裁は、次のように述べて、上記東京高裁の結論同様、物のパブリシティ権を否定し、ゲーム会社の損害賠償責任を否定しました。

上記の記事の通り、競走馬の(物の)パブリシティ権最高裁によって否定されているのが最新の判例で、これを根拠にブエナビスタ(CV:水瀬いのり)を作中に出すこともできただろう。「ディープインパクト、強さの秘密」というタイトルでディープインパクトの強さの秘密を記した本を書き、出版したことでそれを馬主によって販売差し止めされたり馬名使用料を請求されるいわれなどないわけで、なるほど当然と言えよう。ただ、嫌だと言う人の意向を無視したところで「あの会社は仁義を通さない」という評判が立つのはCygames社としても良くないということか(サトノ冠の里見治さんは同じエンターテイメント業界のセガサミーの会長だし)、出てない馬主の馬はキレイに本作ウマ娘に出ていない。

このあたりの関係者についての配慮として、二次創作に関しての公式からお願いがある。

https://umamusume.jp/news/detail.php?id=news-0106

本作品には実在する競走馬をモチーフとしたキャラクターが登場しており、許諾をいただいて馬名をお借りしている馬主のみなさまを含め、たくさんの方の協力により実現している作品です。
モチーフとなる競走馬のファンの皆さまや、馬主さまおよび関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現は行わないようご配慮くださいますようお願いいたします。

ウマ娘プロジェクトは、名馬たちの尊厳を損なわないために、今後も皆さまとともに競走馬やその活躍を応援してまいります。

事実上のエ■禁止みたいな言われ方をするが、総合的に「ナマモノなんだから、わかってるよね」という釘の刺し方で、これについては多くの人にご理解いただけているようで、公式の良い仕事と言えるだろう(ゴールドシップのキャラ設定、主に言動について「モチーフとなる競走馬のファンの皆さまや、馬主さまおよび関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現」ではないというその自信はなんなんだ、というツッコミは置いておいて)

この二次創作に関することで1つ付け加えたいとすれば、上記判例は「あくまで競馬ゲームに登場する馬名と設定などを使用する場合において」のものであり、現時点で既に制作された、あるいはこれから制作されるすべての二次創作物に関して権利の侵害を認めない、ということではないということに御留意いただきたい。つまり上記判例とは違った、それこそ難癖と思われるような論理で訴えを起こされ、作者が法廷に呼ばれたり、また権利の侵害が認定されたりしないことを保証するものではない。


……ここまでで前半終了。後半は、競走馬の権利関係だけではない着陸不能な低空飛行について。

楽曲リリースでウマ娘プロジェクトは加速するのか?

前出のサイゲのイベントステージにて発表された楽曲のリリースを控える中、ハルウララのコミカライズは9月11日をもって連載が終了。明確に動いているのは楽曲関連だけという中、満を持してついに楽曲のリリースを迎えるのであるが……

なんと、それが大コケする。

全然売れなかった。どれくらい売れなかったかというと、1枚目が初動3桁・観測可能な累計が1000ちょっと。2枚目~に至っては観測可能な限り1000売れない作品が続く。

 アニソンCD売り上げデータ保管庫: ウマ娘 プリティーダービー(非公式データ)

比べちゃいけないのはわかっているが、(ウマ娘スマホゲームをリリースしていないが)同じスマホゲームがスタートの「あんさんぶるスターズ!」だと初動で万overするものである。ウマ娘スマホゲームもリリースされていないので、40分の1くらいしか動かないのも当たり前といえば当たり前なのであるが。とにかく、この「STARTING GATE」シリーズがメチャクチャ売れなかった。同じCygamesでも「グラブル」のキャラが歌う楽曲は初動で1万売れるものもあるくらいなのに、ウマ娘はとにかく売れなかった。少しだけ売れるようになって初動で1000ちょっと……とかそういうレベル。いや、プロジェクトの認知度や他のメディアがないと……という擁護もあるかと思うが、なんと、後述のTVアニメ1期が始まって終わって、そこそこの評価を得た後も、また楽曲展開は初動で1000行くと「おっ売れたな?」となるくらい売れなかった。TVアニメのOP主題歌とかだと初動で2000くらいは出たんだけれど、そういうの以外はピクリとも売れる気配がなく、完全なる大コケに終わった。

何でや……ライブステージで衣装付きで声優に歌わせて披露、元ネタはジャンルとして不動の競馬の超名馬、天下のサイゲランティスが組んで、仕掛け人は「アイマス」の石原氏……流行らんわけないだろ……

盤石の布陣で売れなかった理由はわからない(わかりません)が、当時の「競馬ファン側」の意見として多く目にしたのは(観測範囲の偏りもあるかもしれないけれど)、元ネタへの経緯を欠いている、という指摘。

  1. 馬主サイドと折り合いが悪いのか、理由も明かされないまま消去されるキャラや起用から外れる人気声優の存在
  2. ゲームもアニメも制作発表すらないのに、馬の名前だけ使って曲作って声優に歌わせてライブ・アイドル商売を始める敷居のまたぎ方
  3. 挙げ句に馬名名義で歌わせている曲の歌詞が元ネタと合っていない

3番目については実例を挙げよう。

2016年11月30日発売「STARTING GATE 01」より、トウカイテイオーMachico)名義「恋はダービー☆」の歌詞の冒頭より。

まっすぐな目で こっち見ないで
かわせない 逃げれない
こんな時 どうすんの?
恋の経験値 ギミギミギミ!

はい……。トウカイテイオーといえば、無敗で皐月賞ダービーを制し二冠を達成した名馬ですね。怪我で三冠達成を逃した後に、復帰してJCを勝利、その後また怪我で長期休養の後に1年振りの出走となった有馬記念で劇的な勝利。「かわせない」で悩むことはなかったし「逃げれない」こともなかった馬ですね。作詞者の方、ウィキペディアくらいは見ましたか? この歌詞でOKした責任者の方、競馬ってご存知ですか?

とまあ、一番理解不能な例を挙げたけれど、その後もサイレンススズカは「一人旅」「マイペース」あたりがモチーフ、マルゼンスキーは「スーパーカー」がモチーフと、ギリギリそんなもんかと思える歌詞もあれば、正直キャラソンとして理解できないものも多く、後に出てくる「競走馬またはキャラクターのイメージを著しく損なう表現」についての言及が「どの口で言うのか」と評価されるのも宜なるかなというくらい、とにかく「元ネタへの敬意」が感じられなかった。今でも蛇蝎のごとく嫌う競馬ファンがいるのは、この頃の不義理が大きいことは、ゲームやアニメを楽しむ人々にも御理解いただきたい。その後どれだけ良質なコンテンツが生み出されようとここで一発レッド、二度と見向きも耳を傾けもしない胸糞の悪いコンテンツの箱に入れる人がそれなりの数出たことは、残念ながら当然と言える。

AnimeJapan 2017にてTVアニメとゲームの制作が発表される(2017年3月25日)

1年間暗礁の上で売れない歌を歌い続けてきたウマ娘だったが、プロジェクトの公表からちょうど1年、ついに転機が訪れる。

dengekionline.com

3月25日に“AnimeJapan 2017”のCygamesブースで開催されたウマ娘スペシャルステージ“『ウマ娘 プリティーダービー』大発表会!!”で、新作ゲームの第1弾トレーラームービーやアニメ化、コミカライズ、ライブイベントなど、最新メディアミックス情報が発表されました。

テレビアニメ化とゲーム制作が発表となり、多少なりとも「進める気」が明らかになった。

youtu.be

当初のPVから少し変化が感じられる。ライブシーンは「アイマス」風、かつ当初版にあったスパート時の表情の変化が抑えられている。このあたりが石原氏の目に見える影響なのだろうか。

この直後の石原氏へのインタビュー記事。
www.famitsu.com

ライブイベントに関しては、スタートアップイベントと銘打つように、声優と制作スタッフ、トレーナー候補の皆さんで“打ち入り”をするつもりです。ゲームのステージは“ショーレビュー”的な考えなのですが、2017年7月1日の舞浜アンフィシアターでのイベントは、ただ歌を歌って終わりということではなく、タイトルどおり“特別な週末”になるようなイベント感がある内容にするつもりです。

既に楽曲展開が大苦戦し、TVアニメはこの1年後に放映開始、ゲームは4年後に配信開始という「今」から見ると大変味わい深い発言である。記事の内容も、ゲームではキャラを育てて走らせることについての話とライブについての話、後者が2倍くらいある上に実際リリースされた版で好評のシナリオや継承システムについては一切触れていない。もちろん話せないことも多かったのだろうが「この記事とは何だったのだ」感が凄い。

TVアニメ版「ウマ娘」放映開始(2018年4月2日)

2018年4月2日、ついに本作「ウマ娘」のTVアニメが放映開始となる。プロジェクトの公表からちょうど2年程度。17年の7月にはゲームのリリースが18年になるという発表があり、事前登録開始は2018年3月25日からとなっていた。

dengekionline.com


TVアニメのシリーズ構成は石原氏と、杉浦理史氏の連名。決して石原氏が一人でシリーズ構成を手掛けたわけではない。

さて、コケにコケた楽曲展開、幻のゲームとなりつつあるゲームアプリとネタ性が先行し名高くなってきたウマ娘だが、このアニメ版がそこそこ好評のうちに幕を閉じた。史実に脚色を施したというシナリオや、それを通じて伝わる競馬という競技の面白さやキャラクターなどが特に評価されていたように観測している(筆者は未視聴)。大人気覇権アニメとまではいかずとも、ウケるのはこの路線なのではないか……?という手応えをウマ娘プロジェクトの中の人が感じ取ったのか、このTVアニメの放映あたりを境に、ウマ娘プロジェクトの方針転換がある。公表初期から始まる楽曲・ライブ・声優という軸から、競技(スポ根)・シナリオ・キャラクターという軸の押し出しが感じられるようになる。
TVアニメ放映後は新たな楽曲制作による商品リリースはなし。会場を借りてのライブイベントも、TVアニメ放映前から決まっていたであろう2018年10月14日の2nd EVENTを最後に3回目以降は発表なし(2020年はコロナもあったが)

umamusume.jp

石原氏のコンテンツプロデューサー退任(サイゲ退職)と、更に加速するスポ根路線

www.famitsu.com

もちろん、実際行動に起こしてからは問題にぶち当たることもあります。ただ、リスク回避のために石橋を叩いて叩いて……そして壊すという企業が多いなか、いきなり躊躇なく踏み出すことができるのはクリエイターにとっては最高の環境といえます。

2018年6月の記事でこう仰っていた石原氏は、2019年4月、ウマ娘プロジェクト公表から3年後、ゲームアプリのリリースを待たずしてCygamesを退職し、ウマ娘のコンテンツプロデューサーを退任となる。

https://umamusume.jp/news/detail.php?id=news-0124

この時点で結果的に3年もの時間を浪費したことになったウマ娘プロジェクト。(時系列からもわかるが、立ち上げたわけではなく)「預かった」ウマ娘のプロジェクトでコンテンツプロデューサーとして大きい功績を残せていたのであれば、道半ばで役職を降りることもなかっただろう。ゲームアプリがリリースされ、それが大好評である今から見たら、より「2年前にプロデューサーを退任となって会社も退職した人のゲームが、当初から路線変更し大好評」であることが色濃く浮き上がってしまっている。その後、グッドスマイルカンパニーで仕事をしているという記事はあったが、何か具体的な実績を挙げているという話は耳にしていない。

www.famitsu.com

過去に制作した他社のゲームについてインタビューを受けていたようではあるが……。

決定的な転換点転換点の通過がハッキリした「シンデレラグレイ」の制作

石原氏退任から1年。「シンデレラグレイ」が週刊ヤングジャンプ誌上で連載が始まり、この作品が好評で、現在(2021年3月16日時点)でも既に刊行されている1,2巻とも手に入りづらい状態となっている。試し読みなどをしていただければわかる通り、この「シンデレラグレイ」は紛れもないスポ根モノであり、あと漫画が上手い。TVアニメ版を踏まえて……なのか、満を持しての覇権コンテンツがついにウマ娘に登場したのである。

booklive.jp

オグリキャップの育成・笠松時代からスタートし、スポ根モノの基本中の基本、無名の超才能が努力によってスターダムにのし上がる様を描く。ハッキリ言って、これまでのク○プロジェクトは何だったんだってくらい面白い。トウカイテイオーに「逃げれない」とか歌わせてたプロジェクトから出てきた作品かこれ、という本格的なマジモノ。なんだったら、他は毛嫌いしてもいいからこれだけ読んでくれ。2021年まで来て正統派スポ根が大当たりし、そして……

ゲームアプリがついにリリース

2021年2月24日、ついについについに、プロジェクト公表から5年弱、ウマ娘のゲームアプリはAndroid版、iOS版同時にリリースとなった。その評判については、この記事をここまで読んだ方は御存知の通り。記事執筆時点(3月16日)でソーシャルメディア上におけるスマホアプリゲームぶっちぎりの超覇権ゲームとなっている。「マスターも、プロデューサーも、提督も競馬に行ったきり帰ってこない」という「ネタ妬み」が遥か後方に置かれる盛況ぶりである。

長かった。この記事も長くなった。お疲れさまでした。もう少しだけ続くんじゃ。

最後に、この「当初の不義理も(ある程度)吹き飛ばす大ヒットゲーム」が生まれたキーポイントについて、私見を書いておきたい。それは、元ネタである競馬のスターホースたちをぞんざいに扱い、しつこい物言いとはなるが、トウカイテイオーに「逃げれない」と歌わせるような当時の方針が受け入れられなかったことにあるのではないかと思う。ゲームもアニメも具体的な制作発表がない、できない段階でそのような楽曲展開を先行させ、キャストをステージに上げ歌って踊らせ、「デレステ」のようなライブステージを売りにするようなゲームでは売れない、コンテンツとして成立しないと制作サイドに判断させたことで、ゲーム(やアニメも?)の制作方針が変わり、開発期間は長期化したがゲーム史に名を残すようなゲームが生まれたのではないかと考えている。蛇蝎のごとく「ウマ娘」を嫌っていた人々もそれに貢献してしまっている……と書くと嫌味や皮肉に聞こえてしまうかもしれないが、少なくとも「お気軽なアイドルゲーム、レースもちょっとあるよ」という内容よりは、マシに思えるのではないか(覇権ゲームになって解釈違いが大量発生するほうが嫌、という御意見ももちろんあるかと)

当然、何らかの虎の尾を踏み抜いた形跡があるのは明らかで、それについてはいつか精算する時が来るのか、または十字架を抱えたまま終了まで行くのかはわからないが、横たわる黒歴史として刺さり続ける。

「ゲームのスクショを見たけど、キャラがプレイヤーに気に入られようと媚び売ったり奇行に走らされているのを見ると残念な気持ちになる」みたいな感想をお持ちの方も「シンデレラグレイ」はそういうのないし漫画も上手いし面白いから、是々非々で先入観なしに、これだけ本当にオススメです。何よりも、最初にこれに出会いたかった。今は手に入らないけどな!(オチ)

以下、追記など(3月17日以降に編集)

反論(批判)記事

『ウマ娘』立て直しの功労者として及川啓監督、杉浦理史氏、そして伊藤隼之介Pの名を刻もう - Junchangchangの日記

反論・批判というパッションで書かれたものだけれど、個人的には色々補足いただいてありがたかった記事。お礼などは別記事にて。

それを受けての訂正

見出しを変更『決定的な転換点「シンデレラグレイ」の制作』→『転換点の通過がハッキリした「シンデレラグレイ」の制作』
本文にはTVアニメ1期の放映についての言及で「このTVアニメの放映あたりを境に、ウマ娘プロジェクトの方針転換がある」と記載してあるため、書き方が悪かったシンデレラグレイの開始についての見出しを変更。内容としては引き続き「TVアニメ1期から方針転換が見える」

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今年も海鮮丼の季節がやってきたようです。ご査収のほどよろしくお願いいたします。

のぼり SNB-1154 海鮮丼

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海鮮丼

































海鮮丼ではないもの







「ゴスロリ卓球」(著:蒼山サグ)のネタバレ無&ネタバレ有 感想、競馬元ネタ解説など

まずはネタバレなしレビュー

蒼山サグ先生、またどうしてこのタイミングで新シリーズを書いたんだ……? という発売前の疑問は読んだら吹っ飛んだ。「ゴスロリ卓球」は、本作が蒼山サグ先生のマスターピースとなりそうな「ワクワク感」が津波のように押し寄せる作品だった。

これまでの蒼山サグ作品に登場してきたものとは毛色が違う、人間としての尊厳を賭けたギリギリのヒリつく勝負が描かれている。そのベースとなる部分は、おそらくサグ先生が競馬専門チャンネルの番組に出演する程に造詣が深い競馬。掛け金は天井知らず、勝負は一瞬。自らの信じる「駒」にすべてをBetし、願い、信じ、祈る……自らがプレイヤーではなく、勝利へと導く者が主人公という点では「ロウきゅーぶ!」や「天使の3P!」などの流れを汲んでいるが、舞台設定や描かれ方・世界観はかなり異質と言える。

正直な話、この重苦しくて「賭博」という対象年齢が高そうなテーマを、なぜ電撃文庫にぶつけてきたのかという部分はある。しかし、読んでみたらわかった。このシリーズこそがサグ先生の真髄であり、これこそを電撃文庫ならびに「ライトノベル」のファンに読んで欲しい、作家人生の集大成になるような作品として打ち出していきたい、そういう「筆の走り」を感じる作品だった。全編がノリノリであり、1つの物語として完結し、そして「次の物語が早く読みたい」ああ、この舞台・キャラがどう次のステージで輝きを放つのか――電撃文庫で続きが出ないのであればクラウドファンディングに寄付をしてでも読みたい、そういうシリーズのプレリュードであった。


ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)


以下、ネタバレ有り感想・細かい競馬ネタ考察。

ここからネタバレ有り

まず、冒頭から「バカ高い競走馬(サラブレッド)を積んだ馬運車には気をつけろ」という内容でスタートする。そう、競馬ジャンルの作品だからだ。ちなみにサラブレッドとは競走馬の品種のことで*1、「政界のサラブレッド」という慣用表現にもあるように血筋の良い人にも使われる。本作ヒロイン羽麗も父親が卓球バカなので、卓球においてはサラブレッドとも言える。

→参考 サラブレッドとは(JRA)

サラブレッドと馬主の関係」(P39)

競走馬は、場合によっては億単位の金額でオーナー(馬主)に買われる。日本でのサラブレッドの競売(オークション)における最高金額は、2018年現在6億円(税別)である。

→参考 2018年のセレクトセール1日目のレポート。1日で総額約100億円弱の取引が行われている

「『公正』というものをアピールしておかないと外野の客がうるさい」(P69)

このあたりの「イカサマや八百長を行わせないために」のくだりは、調整ルームという施設にレース前日から騎手が入って外部との連絡を完全にシャットアウトする必要がある、という日本の競馬で採用されている制度を模したものと考えられる。
「公正確保」のために調整ルームでは電話・インターネットも禁止されていて、ルールの適用は厳格。調整ルーム入りしているはずの騎手がツイッターリツイートを行っただけで、トップジョッキーですら約1ヶ月の騎乗停止処分を受けることもある。それほどギャンブルにおいては公正を確保し、参加者間での不信を生まないことが重要なのである。

→参考 調整ルーム(JRA競馬用語辞典)
→参考 ファンがっかり…ルメール、ツイッターで騎乗停止(サンケイスポーツ)

横川梓のオーナー・佐々木(P72)

競走馬のオーナーで佐々木といえば、もちろん元プロ野球選手の佐々木主浩。「大魔神」の異名でストッパーを務め1998年横浜ベイスターズ優勝の立役者となり、メジャーリーグでも活躍した。競走馬のオーナーとしてもヴィルシーナヴィブロスシュヴァルグランと3頭のG1勝ち馬を所有した。
佐々木オーナー(本作)が少数精鋭で選手を所有するというのも、頭数を多く所有しない佐々木主浩由来であることがうかがえる。
「横川」は所属していた「横浜」のもじりか。「梓」もなんとなく佐々木主浩の「木主」に似ている気がするし、柱じゃマズイので似ている字の梓にしたような気がする。(ここは気がするだけ)
*2

→参考 佐々木主浩 - Wikipedia

メイドカフェ「カテドラル」(P104)

蒼山サグ先生が入会している、競走馬に多人数で出資して共同で権利を所有する「一口馬主」というものがあり、その中での出資馬「カテドラル」に由来するものと思われる。
作中に登場する競走馬が由来となる組織(グループ)といえば、「天使の3P!」ではリヤンドファミユやサオノワが作中に登場しているが、リヤンドファミユ三冠馬の弟でG1を勝てると言われた程の馬、サオノワはフランスでダービーと位置づけられているレースを勝った馬といずれも有名な馬であった。ところが、このカテドラルという名前の馬は本作発売時点でまだ1戦して1勝、そのデビュー戦を勝ったのも発売の2ヶ月前であり、G1レースには出るのもまだまだ先。そんな馬の名前をヒロインが働くメイドカフェの名前に採用してしまうなど、サグ先生の期待の程がうかがえる。


→参考 カテドラル(キャロットクラブ)

「競馬で言うところの万馬券」(P116)

競馬の馬券発売は基本的に100円単位で、100円買った馬券が1万円以上になることから倍率が100倍以上の配当金が出た・的中した場合は「万馬券」と言う。
ちなみに「帯で封がされた札束」というのも競馬にちなんだ表現で、競馬場などで100万円以上の払い戻しを受ける場合は窓口で100万円ごとに「帯で封がされた札束」を受け取ることになり、ファンの間ではこの「帯封」を手に入れること、転じて100万円以上の払い戻しを受けるような大儲けをすることが夢とされている。


以下ネタバレ有り感想

冒頭のネタバレなしの部分では堅苦しく書いたけれど、本当にこれでしょ、これが書きたかったんでしょう感が溢れるノリノリの筆致、そんでもってスタートからゴールまでとにかくヒリつく勝負と「プレイヤーの運用」が主眼のストーリーが面白くて仕方がない。テーマとして「賭博」というワードが前面に出ている本作なんだけれど、確かに世界観はベース部分は競馬を模した卓球の勝負システムにオリジナルのライブベッティングを乗せたものなんだけれど、物語や主人公の立ち位置は博徒・ギャンブラーというよりは競馬でいうレーシングマネージャーに近いもので、プレイヤーに近い立ち位置で「勝負の世界」に浸かってリスクも同様に引き受けている、ということになっている。
これ!これ! この「一緒に勝負の世界で人間の尊厳を賭けて生きたい」という情熱が、コミカルな部分を出しながら徐々に後戻りできない深みへ身をやつしていく主人公へと伝播していく画は胸が熱くなるばかりであり、さすがとしか言いようがない。
「奈落」で修と羽麗を待ち受けるものとは何か、続刊を読みたい。
そして―― こんなの読んだら「ぼくの考えたさいきょうのゴスロリ卓球」のアイデアが溢れ出てくるに決まってるでしょー! もう! というのは主張しておきたい、置いておきたい。
卓球を博打として面白くするためのアイデア、ポイントの傾斜がある状態からのスタートや手足に重りをつけて不利にした状態でのプレーをさせるハンデ戦はもちろん、ベッティングエクスチェンジなどのライブベッティングのシステムを更に盛り込んで「賭ける側のプレイヤー」を魅力的に描いたり、NFLなどアメスポから指標を活かす面白さみたいなものも描けるし、卓球自体ももっともっと魅力があるはず。大金が動くのであれば、選手の育成段階から資産をつぎ込んでいるオーナーがいてもいい。良い選手を見極める所有選手見学ツアー(仮)やオークションがあってもいい。イカサマ・八百長や賭ける側の話も絶対に面白い。ポイントを奪われると電流が流れたり、血を抜かれたり、ゴスロリ鉄骨渡りしたり……、闇の側(鼻と顎が尖ってそう)のシーンも楽しそう。
奈落ではどんなルールなのか? トレーダーとプレイヤーだけじゃなくて、才能を伸ばす役割のトレーニング担当はつかないの? などなど、ああ、こうやってみんな「ぼくの考えた最高の異世界」みたいなのを考えて楽しんでいるんだなぁ……。衣装デザインももっと"Angelic Pretty"っぽいのが見たいし、衣装デザイナー起用してカッコイイの描いて……みたく、最強のゴスロリ卓球妄想は尽きない。
小学生は最高だったが、ゴスロリ卓球はビジネスだ……! 笹島康助! 俺もゴスロリ卓球やりたいぞ!(※選手として、ではない)

*1:厳密には「品種」ではないのだが

*2:同様に梓のトレーダーになる前田も、ノースヒルズ前田幸治代表が由来かもしれない

キャロットクラブ募集馬見学ツアー名物海鮮丼 2018年版

今年も海鮮丼の季節がやってきたようです。ご査収のほどよろしくお願いいたします。

海鮮丼(木曜)










海鮮丼 横幕 No.61402(受注生産)

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海鮮丼(金曜)




















のぼり 5992 海鮮丼

のぼり 5992 海鮮丼


海鮮丼ではないもの





その他